業界の常識破る戦略展開、急成長

通勤客でにぎわう小田急相模原駅(神奈川県相模原市)。駅入り口脇に「カットのみ、10分1000円」で業績を飛躍的に伸ばした
理容店「QBハウス」が出店したのは平成13年11月だった。

駅前で理容店を営む秋山実さん(58)は「寿司屋の隣に回転寿司チェーンができたようなもの。
売り上げは20%落ち込んだ」と話す。

「影響は駅前だけではない」とは、同駅から離れた座間市に店を構える
千葉芳弘さん(66)。
「特に『今さらカッコつけなくてもいい』という年配の客が流れてしまたと表情が曇る。

全国約14万店の理容店のうち10万店が組合に加入し、「強固な組合が形成されている」
(関係者)という業界。
組合加入店の立場から「QB−」の動向をうかがう全国理容組合元講師の
菅沼邦夫さん(70)は「住宅地の住民が利用する小田急相模原のようね駅の場合、
駅利用者は必ずQBの前を通る。
広告効果は絶大で、影響はすぐ遠方の住宅地に波及する」と分析する。

「QB−」出店は思わぬ事態まで招いた。同地区の組合加入店は調髪の価格を
4000円前後、同駅周辺に13ある非組合店は加入店より安めの価格を設定してきた。
だが、「非組合店がQBに対抗するため、一斉に『カットのみ10分1000円』のメニューを
加えてきた。組合店にすれば、近所にQBハウスが突然、14店できたようなもので、
頭が痛い」(千葉氏)。

平成8年に参入、業界に激震を走らせている「QB−」は、業界の常識を打ち破る戦略を
繰り広げている。切った髪は掃除機を改良した「エアウォッシャー」で吸い取り、
イスはパチンコ店のものを改良、料金支払いは1000円札のみ使用可の券売機。
菅沼氏は「使い終わったクシのプレゼントや、店外の赤・黄・青のランプで待ち時間を
知らせるシステムなど敵ながらあっぱれ」と脱帽する。

8年11月、第1号店を神田にオープンしたのを皮切りに、現在、全国184店、
海外10店を展開する一大理容チェーンへと成長した。
菅昭氏は「(QBの)営業管理は完璧で、生産能力は一般理容店の4倍。イス3台のQB−店を
一般理容店に換算すると、イス12台の超大型店になる。この生産能力は脅威だ」と指摘する。

現役を引退した菅沼氏だが、「QB−」成長に危機感を抱き、同業者向けに対応策をつづったリポート「生き残れるか理容業」を作成。
500部以上を配布してきた。
「理容業界はこれまで法律によって横並びを是とし、競争しないことを原則としてきた。危機感を募らせて新たなアイデアを出す組合員が
いる一方『波風をたてるな』と躍起になる組合支部長も多い。QBも強敵だが、組合内の"抵抗勢力"も強敵」(菅沼氏)
「足の引っ張り合い」が続く現状。菅沼氏は、「OB−」側の「遅れた業界の体質が正功の要因」といった高笑いが聞こえる思いだ。

強固な組合が形成され、「横並び体質が染み付いている」という理容業界。飛躍的に店舗数を伸ばす格安店に対し、
「町の理容店」は衰退する一方なのか。ばく進申の「QB-」」に死角はないのか。揺れる業界の今と未来を徹底検証した。